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【特別寄稿】不動産マーケット・フォーカス 不動産マーケットで今注目されている動きとは?その背景や今後の見通しは?不動産マーケットの今を連載・深堀りしていきます。(不動産経済研究所が発行する「不動産経済ファンドレビュー」の2018年2月5日号の連載連載「FOCUS」を再編集して掲載)
毎月分配型投資信託からの資金流出や、物件価格の高騰とCapレートのさらなる低下は、常に成長を求められるJリートの運営を難しくしている。これまで通りの成長戦略では行き詰まりも否めない環境下、昨年は手元資金を活用したJリート初の取り組みが相次いで実施された。自己投資口の取得、メザニン投資、病院投資がそれだ。実施の背景や狙い、投資家評価、今後の展開についてレポートする。
メザニン投資は、スターアジア投資法人(SAR)が昨年10月に先行実施した。東京・大田区のビジネスホテルを裏付資産とする劣後社債を4億円で取得。続く12月にも第2号案件として、東京・渋谷区の中規模オフィスが裏付資産の劣後受益権を3.3億円で取得した。投資口価格は昨年10月から約10%上昇、東証リート指数を3%弱アウトパフォームしている。 SARは競争が激しい足元の不動産マーケットにおいて、メザニン投資は「現物不動産への投資に替わる手法として有効」と捉えている。自己資金を有効活用しながら、既存ポートフォリオの償却後利回りを超える利息収入が得られる点が魅力だ。裏付資産に対するメザニンを含む債権額が、SARが取得する鑑定評価額の85%以下であるなど、一定の投資基準を設けてリスクを抑える。SARは差別化戦略の1つとして、今後もメザニン投資を継続的に検討していく方針。 昨年は新たなアセットタイプへの挑戦という意味でも、Jリート初の投資が行われた。ヘルスケア&メディカル投資法人(HCM)による病院不動産の組入れだ。昨年11月、医療法人愛広会が運営する新潟市・北区の「新潟リハビリテーション病院」を20.6億円、NOI利回り7.4%で取得した。愛広会は新潟県内を中心に教育・医療・福祉分野で幅広く事業展開するNSGグループに属しており、HCMは同グループの流動化ニーズを捉えて取得を実現した。 HCMの運用会社であるヘルスケアアセットマネジメントの吉岡靖二社長は「第1号案件にふさわしいとくに優良な病院の組み入れに非常にこだわった」と強調する。その理由は大きく2つある。1つは投資家に安心感を持ってもらうため。優良なオペレーターが運営しキャッシュ・フローが安定的に享受できる病院を厳選した。もう1つは病院関係者が抱くファンドや流動化に対するイメージの払拭。過去の病院流動化はファンドによる再生案件が多かったため、どうしても「流動化案件=経営が左前になった病院」という目で見られてしまう。それだけに経営が良好かつ安定した病院を選び、これまでの流動化とは一線を画す事例だということを各方面に認識してもらう必要があった。 取得した新潟の病院は、国が進める地域医療構想の中で、どの地域でも不足し、今後一段と求められるリハビリ機能を有した回復期病院であり、この分野で長年の実績を有している。オペレーターは新潟の一大企業グループに属し、財務基盤も安定し賃料負担力も高い。さらに、多くの投資家が病院に期待する利回り、具体的には近隣の老人ホームの利回りに50~100bp上乗せした水準にも適う7.4%での取得も可能にした。まさに第1号案件にふさわしい案件だったと言える。 HCMの投資口は11月以降、約12%上昇。東証リート指数を約3%アウトパフォームし、投資家評価は高い。HCMは今後も経営が安定した病院を取得したい考えだ。そうした良質な病院は得てして流動化ニーズが低いが、M&A や事業承継、建替えに伴う資金需要をうまく捉えていけば取得機会が生まれると見る。 2018年に入り、足元で回復基調にあるJリート市場。だが、物件の取得競争は依然激しく、毎月分配型投信の問題もいまだ出口が見えていない。Jリートは引き続き、既存の枠にとらわれない取り組みが求められそうだ。
「不動産経済ファンドレビュー」とは 株式会社不動産経済研究所が発行する不動産金融の専門誌。不動産投資マーケットや不動産業界に関する最新動向、注目の企業・人物、大型物件の取引事例、話題の開発プロジェクト、バリューアップ事例などを紹介。Jリートのパフォーマンス分析、金融機関の不動産関連投融資データ分析、業界通による覆面座談会なども掲載する。月3回発行、2005年3月に創刊。 株式会社不動産経済研究所ホームページ
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